CD・本・作品集
「Lullaby」
優しく美しい旋律を生き生きとした音で奏でられた
この一枚は、誰もの心を安らぎへと誘うことでしょう。
曲目
1 江戸子守歌
2 房のささやき
3 ゆりかごの歌
4 モーツアルトの子守歌
5 中国地方の子守歌
6 シューベルトの子守歌
7 五木の子守歌
8 ブラームスの子守歌
9 サティのように
10 ドリーの子守歌
11 竹田の子守歌
12 おやすみ
13 ジョスランの子守歌
14 小泉八雲の子守歌
フルート 吉川久子
ギター 千代正行
パーカッション 三浦肇
秋山真志(作家)
音楽を言語化するほど虚しいことはない。ライヴを、 CDを聴きながら、その時々の感情で音楽を楽しみ、悲しみ、心のままに噛みしめるに如くはない。田村隆ーの詩に「ウイスキーを水でわるように言葉を意味でわるわけにはいかない 」という一節があるが、 “言葉”を“音楽”に置き換えても同じことがいえるだろう。単純なことだ。そこには“意味”も、 “理屈”も介在する余地はない。しかしながら、それではライナーノーツにならないので、少し補足する。母親の声の音域に近く、息を入れ込むことで音に命を与えるといわれるフルートの音で詩的に演奏したのが、この「Lullaby」であろう。耳に馴染んだ子守歌もあれば、吉川久子さんのオリジナルもある。深みがあり、温かで、精妙で、伸びやかで、張りがあって、はんなりとしていて、とてもやさしい音色である。このCDを聴きながら、世代や国境を超えて母親に抱かれた幼子のような心持ちに浸ってみるのもいいものである
小山明子(女優)
私が吉川久子さんに出会ったのは、鎌倉ペンクラブで彼女の演奏を聴いたのが最初であったと記憶しています。彼女のフルートの音を聴いたとき、全身の疲れがすっと抜け、体が軽くなり、心穏やかになったことを今でも思い出すことができます。その日から、私は時間の許す限り、彼女の演奏会に出かける楽しみを人生のひとつに加えました。
人間にとって音や音楽は本当に重要な存在であることを改めて感じています。主人(大島渚)は、話すこともままならなくなった時でさえ、音や言葉に反応していました。そんな主人とも優しい澄んだ音色の彼女のCDを良く聴きました。
彼女の奏でるフルートの世界は、様々な映像と景色を浮かべることができます。この曲集を聴いてくつろぐとともに、懐かしい光景を思い出したり、新しい日々を想像することにしましょう。長年、未来の子供たち(胎児)に音楽を提供してきたマタニティコンサートの草分けといわれる彼女の演奏はひときわ魅力ある子守歌として収録されていると思います。
平和を願い愛や優しさを感じるこの一枚を私のお気に入りの一枚に加えたいと思います。
牧内良平テレビ神奈川名誉相談役 (元代表取締役会長)
新譜「Lullaby」は、文字通り優しい音色の、癒しの子守歌だ。日本伝来の子守歌、シュー
ベルトなど洋楽の子守歌のほか、吉川さん作曲の「房のささやき」「小泉八雲の子守歌」など
が収録されている。
私は、吉川さん作曲の「湘南太平記」「谷戸の風」が大好きで、CDをマイカーにセットし
てドライブの度に聴いているが、「小泉八雲の子守歌」は聴いた途端に好きになってしまった。
優しいが、リズムカルな第一主題が、ラベルの「ボレロ」のように何回も繰り返し流れ、やがて
第二主題に移り、絶妙に織りなして、純日本調の終局を迎える。フルートの音色が、何とも
優雅だ。
吉川さんのフルート演奏は、マタニティーコンサートを1000回、50万人に聴かせてき
ただけあって、母の声の音域さながらの柔らかい音色で奏でている。子守歌特集盤としては、
秀逸のCDと言える。